展覧会/Exhibition

2025年2月20日 (木)

ブルックリン博物館所蔵 特別展「古代エジプト」掘り起こせ、三千年の謎@森アーツセンターギャラリー

1896年に開館したブルックリン博物館(ニューヨーク市ブルックリン区)の収蔵品は150万点を超えている。モネやドガなどの印象派の絵画や、浮世絵のコレクションが充実している。

なかでも、古代エジプト美術コレクションは、彫刻、レリーフ、絵画、土器、パピルスなど、1200点を超える貴重な作品を有し、特に実物のミイラや埋葬の儀式に関連する品々が並ぶ「ミイラの間」は、永遠の命を確実にするために体を保存を必要とする古代エジプトの信仰心を探求する展示として、博物館の人気スポットとなっているという。

本展では、ブルックリン博物館の古代コレクションから、彫刻、棺、宝飾品、土器、パピルス、さらに人間やネコのミイラなど約150点の遺物を通じて、人々がどんな暮らしを営み、何を食べ、何を畏れ、どんな言語を話し、何を書き残し、ピラミッドがどのようにして造られ、ミイラに託されたメッセージとは、そして死後の世界とは、などなど「知っているようで知らない事実」が解き明かされるかもしれない。

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貴族の男性レリーフ
前1292~前1075年頃 出土地不詳
石灰岩、顔料 51.3x43.8x7.62cm

高貴な衣装をまとい、複雑な巻き髪とロータスの花のついた紐帯から成る、凝ったかつらをかぶっている。新王国時代のエリート層の墓に描かれたレリーフのうち、供物を捧げる場面の典型的な装い。レリーフの左側にはシストラム(ガラガラに似た楽器)と花を持つ女性の手が残っている。

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同上

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同上

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ニカーラーとその家族の像
前2455~前2350年頃 サッカラ(推定)
石灰岩、顔料 57.5x36.8x27.7

彩色された石灰岩で彫られたこの家族の像は、<穀物倉の書記の監督官>であるニカーラーが座り、その両脇に<王の知人>の称号をもつ妻カウネブティと、<穀物倉の書記>である息子アンクマーラーが立っている。

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同上

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椰子のサンダル
後3世紀~4世紀 出土地不詳
椰子の葉、ガラス、染料 27.7x6.7x2.2cm

 

エジプトにおけるサンダルの起源は少なくとも紀元前4000年までさかのぼる。サンダルは生前も死後も着用され、後の時代にはあらゆる階層の人々にも使われたと考えられる。植物の繊維や皮から作られ、最も質の良いサンダルは通常、工房で製作された。

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ベス神の顔をかたどった壺
前522~前332年 サッカラ(伝)
粘土、泥漿 17.2x10.4

守護神ベスがうなっている顔が描かれた壺。ベスは家族を見守る神であるため、このにらむようなベスの顔には邪悪なものを遠ざける意味があった。ベスはまた出産やこどもの幼児期という特に危険な時期に、女性やこどもを守るとされた。

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左:<アメン神の農作業者>アメンエムハトの儀式用鎌
前1479~前1425年頃 テーベ第82号墓(推定)
木、顔料 22.9x34.3x5.1cm
右:ナイル河畔の光景のレリーフ
前1353~前1336年頃 ヘルモポリス・マグナ(推定)
石灰岩、顔料


左の木製の鎌は、先端にフリントの羽が付いていないことと、アメンエムハトという人物の名前とともに<アメン神の農作業者>という称号が刻まれていることから、儀式用のものと考えられる。

右は、漁船技師が木の板をなめらかに仕上げ、2つの水がめをつるした天秤棒をかつぐ農夫が、急な川岸を登っている。

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ブルックリン博物館所蔵
特別展「古代エジプト」掘り起こせ、三千年の謎
森アーツセンターギャラリー(東京・六本木)
2025.1.25(土)~ 4.6(日)
会期中無休

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2025年2月14日 (金)

世界のこどもアート展@日本外国特派員協会

造形作家の浅野修さんが企画の中心となり、日本外国特派員協会の協力で、世界のこどもの絵画展が、今月28日まで、日本外国特派員協会で開催中。

浅野修さんは、筆者が運営に関わってきたカナガワビエンナーレ国際児童画展で審査委員を努めていました。

浅野先生は、出身地である北海道の芽室でレンガ造りの倉庫を利用した「巨大ジャガイモアート館」の運営を行い、どんな痩せた土地でも育ち、人間に栄養をもたらしてくれるジャガイモを、同館のモチーフにしている。同館では自らの立体作品とともに、あるいは作品に組み込んで、世界のこどもたちの絵を観ることができる。

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巨大ジャガイモアート館(北海道・芽室)

 

日本外国特派員協会で展示されている作品は、ウクライナを中心に、スリランカ、イラン、中国、イスラエル、ラトビア、ロシア、オーストラリア、メキシコ、アルゼンチンなどからのこどもたちが描いた絵です。

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浅野先生は、「こどもの絵を描きたい」と晩年語ったパブロ・ピカソから話しをし始めました。こどもを題材にした絵ではなく、ピカソがこどもの頃に描いた絵を、もう一度描きたいと願ったということです。どんな優れた画家であってもその原点はこどもにあるということでしょうか。

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続けて、浅野先生は、「こどもは戦争をしないのだ」と語る。
それは、戦争によって一番に被害を被るのは、こども、老人、障がい者の社会的弱者たちだからです。

「こどもの絵にうまい下手はない」。
こどもはその時々の思考や感情を絵にしています。だから絵のうまさ下手さではなく、こどもの思いをその絵から汲み取ることが大切なことだと思います。

浅野先生のスピーチの後、日本で活動しているウクライナの民族楽器バンドゥーラの演奏家、カテリーナさんの歌と演奏がありました。カテリーナさんは、幼い頃、ウクライナのチェルノブイリ原発事故(1986年)に被災しました。19歳の時、来日し、演奏活動を行っています。当日演奏した曲は、ウクライナの第二国家といわれている「赤いカリーナは草原に」、ジョン・レノンの「イマジン」、そして、赤い鳥の「翼をください」。いずれの楽曲も、ウクライナの平和と自由の願いが込められています。

 

余談ですが、プレスルーム会場には、ウクライナ出身力士、安青錦も駆け付けていました。安青錦の化粧まわしは、キース・へリングをモチーフにしたデザインで、現在開催中の「キース・ヘリング展」の茨城県立近代美術館を訪れたようです。

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今展に出品されているこどもたちの絵は、カナガワビエンナーレ国際児童画展の選外作品です。選外作品の活用事業として、教育文化団体、NPO法人などからの希望に基づき、選外作品の寄贈を行っています。浅野先生から、以前より何回かに分けて選外作品の寄贈希望があり、浅野先生が主宰するNPO十勝めむろ赤レンガ倉庫・巨大じゃがいアート館に寄贈した選外作品です。

 

海外のこどもたちを支援している美術家には、造形作家の上條陽子さんがいます。新人画家の登竜門であった安井賞を女性で始めて受賞した作家の上條さんは、美術評論家の針生一郎が1999年命名した「東京からの七天使」の一人としてパレスチナのガザを初めて訪問し、それ以来、パレスチナのこどもたちとのワークショップを何度か行っています。最近では、ガザの画家3人を日本に招聘し、彼らの作家活動を紹介しています。

浅野先生も上條先生も御年80歳を超えてなおかつ活動を継続されています。

日本外国特派員協会では、記者たちが使用したカメラやヘルメットなどが展示されています。
またプレスルームでスピーチを行った方々の写真も展示。

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世界のこどものアート展
日本外国特派員協会(千代田区丸の内)
2月28日迄開催中

 

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2025年1月30日 (木)

特別展「古代DNA 日本人のきた道」@国立科学博物館 3月15日から開催

特別展「古代DNA 日本人のきた道」(国立科学博物館)は、人類学の篠田謙一(国立科学博物館館長)と考古学の藤尾慎一郎(国立歴史民俗博物館名誉教授)の二人のタッグによる監修のもとで、古代ゲノム解析からわかってきた古代人(日本人)が歩んできた道のりと、集団の歴史が語る未来へのメッセージを伝える。

「最初の日本人」の実態は、化石証拠がないことから謎に包まれていたが、近年、沖縄県石垣島の遺跡から、4万年前の時代の人骨が続々を発見されて、ゲノム解析によってこれらの人骨の研究が進んだ。

人骨に残されたDNA解析から、山間部や海岸部、そして平野で多様な生活をしてきた縄文人がどのような人々だったのがわかってきた。

水田耕作が始まった弥生時代は、縄文人とは見た目のほかに、DNAや考え方が異なる、青銅や石の武器を持つ朝鮮半島青銅器文化の登場によって幕を開けた。1000年あまりで縄文人のDNAと入れ替わった弥生人のDNAの物語も展開される。朝鮮半島からの渡来人の交流を明らかにする重要な資料も展示される。

他に、古墳時代のヤマト政権が誕生する国家形成期の日本を探り、琉球列島集団の形成史、縄文人が北の大地の人々であるアイヌになるまでの文化的変遷を辿る。

展示途中のトピックとして、イヌのきた道とイエネコの歴史が取り挙げられる。

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左から
藤尾慎一郎さん(国立歴史民俗博物館名誉教授)、本展公式サポーターの井上味楽さん、篠田謙一さん(国立科学博物館館長)

特別展「古代DNA 日本人のきた道」
2025年3月15日(土)から6月15日(日)まで
国立科学博物館

 

 

 

 

 

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2025年1月22日 (水)

茨城県天心記念五浦美術館 藤田志朗展 そして六角堂


茨城県の境町に居るのも残すところ二ヶ月半。曇りがちの天気だったが、横浜に戻ると、多分なかなか行けないかも知れないと思い、車を駆って、五浦の美術館に向かった。高速道路を使って二時間半近くのドライブ。


企画展は、創画会の藤田志朗さんの展覧会。年齢は同い年。展示の章だては大まかだが、1980年代終わりから3.11を経て最新までの作品。

観終えてレストランへ。座った席から、湾を挟んで、いわき市が見える。


食べ終えて、六角堂に向かう。一度、津波にさらわれた。といいつも、緊迫感はなかった。というよりも、断崖の先に居住まいがあることに、自分の風景に緊張感が走った。

幻視する風景
藤田志朗の世界
茨城県天心記念五浦美術館
2/11迄
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2025年1月21日 (火)

山口啓介「タブロー版画」ー1990年代山口啓介の初期版画@ギャルリー東京ユマニテ

塩化第二鉄水溶液や硝酸水溶液に銅版をつけ込んで、自分の手の内にあるイメージで、腐食を止めるのが普通なのだが、山口啓介さんの場合は、二割ぐらいが作家自身のイメージだとすれば、残りの八割は、溶液自身が進めていく生成過程に重きを置いていることを聞いている。
山口啓介「タブロー版画」ー1990年代山口啓介の初期銅版画
京橋、ギャルリー東京ユマニテ
1/25迄

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国際コラボ版画展7@Oギャラリー

日本、メキシコ、台湾、アメリカの版画家たちのリレー協働制作の作品展

国際コラボ版画展
銀座、Oギャラリー
1/19 迄

四カ国の四人の各々の版のイメージが重なり、リレー形式で一点の版画作品が出来上がる。四人は同じ場所にいるわけではなく、各々の国での制作が、本展の面白さのひとつ。距離感や時間意識が、作品を醸成させていくように感じる。版画版メールアートかもしれない。
作家単独作品も展示。
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2025年1月 8日 (水)

奥村浩之展「風と波」そして奥能登・再生への道


奥村浩之展
「風と波」そして奥能登・再生への思い
ギャルリー東京ユマニテ
1/14-25



奥村さんの個展の案内パンフが届いた。


奥村さんは、石川県金沢市出身で、金沢美術工芸大学大学院修士課程修了し、1989年にメキシコに渡り、VeracruzのXalapaに在住して彫刻制作を行っています。

奥能登国際芸術祭に出品した石彫《風と波》は、珠洲市の鰐崎海岸に、同芸術祭開催前の2023年8月に設置されました。その前の5月に珠洲市を震源地とした「奥能登地震」があり、芸術祭の開催も危ぶまれましたが、実行委員会の検討の結果、会期を遅らせての開催となりました。

しかし、翌年の2024年1月1日に、わたしたちが知るところの「能登半島地震」が発災し、甚大な被害が生じました。現在でもなおその被害の状況は全く改善されていないことも知るところです。


手元にいただいたパンフには、地震発災当時の奥村さんの気持ちが綴られています。また、故郷のこと、地震によって一部破損を受けた《風と波》についても触れられています。


「(中略)こうして辿り着いた作品設置場所の鰐崎海岸。地震により隆起し、海側へ大きく広がった海岸線に驚きを覚えつつも、いつものように静かな波がさざめいていた。荒磯上の作品設置場所に立つと、報告写真で見た長い地割れの先に作品《風と波》が立っていてくれた。やっと会えたね。」(パンフ「風と波」そして奥能登・再生の思い2025」から引用)

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2024年12月24日 (火)

第2回さかいまち国際児童画展 その5

第二回を開催するあたって、こどもたちの絵を巡る二本の関連企画をやろと思いました。

ひとつは、コンサート(音楽)、もうひとつは、詩の朗読会(文学)。

絵と音楽、そして詩がうまく連環していければと願います。

これにいつの日か、ダンスパフォーマンスをも加えたいとおもいますが.....。

こどもたちに様々に創造する面白さを感じて欲しいです。
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2024年12月23日 (月)

第2回さかいまち国際児童画展 その4


今年8月、95歳で逝去された、茨城県結城市出身の新川和江さんの詩の朗読会を、会期中の2月2日(日)に開きます。事前申込みが必要ですが、小中学生と保護者の二人一組で十組の参加者を募集しています。


取上げる新川和江さんの詩作は、《幼年・少年少女詩篇》です。新川さんが、身近な日常、風景、情感などを詩にしています。


参加者には国際児童画展のこどもたちの絵を観てもらい、絵を観た感想や、絵から得たインスピレーションを、一行か二行かの短い詩にすることを行います。自分で創作した詩を自分で朗読することも行います。


第2回さかいまち国際児童画展
2025年2月24日まで
S-Gallery粛粲寶美術館
茨城県境町

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2024年12月22日 (日)

第2回さかいまち国際児童画展 その3

昔から自分の企画展会場で音楽ライブ演奏をやってみたい夢(大袈裟かな)が、今回実現します。

会期中の2025年1月12日(日)にプロムナードコンサートとして、アルゼンチン音楽などを中心に演奏活動を行っている清水悠さんと秋田勇魚さんのギターデュオ「SANALUCAS」の演奏を会場で行います。

自分の好きなラテン音楽のアルゼンチン音楽の演奏です。
こどもたちの絵を観ながらお楽しみください。

”冬の陽だまりのなかで”
清水悠x秋田勇魚(SANALUCAS)
演奏開始時間:13時半から、14時半から、15時半から

第2回さかいまち国際児童画展
2025年2月24日まで
S-Gallery粛粲寶美術館
茨城県境町
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