第12回いのちかがやくこども美術全国展
0~6歳の子どもが生み出す絵と造形
会期:2024年11月16日~24日
会場:四谷三丁目ランプ坂ギャラリー
主催:NPO法人子ども美術文化研究会
本展を主催するNPO法人子ども美術文化研究会は、自然とのかかわりを重視した自由な環境の中で、「子どもの文化は美術文化」との共通認識のもと、遊びや造形活動、そして描画活動に積極的に取り組む全国各地の保育園・こども園で構成されている。
本展に展示されている0歳から6歳までの絵は、全国の保育園とこども園からの出品。
年齢別の展示解説を引用しつつ、こどもたちの描画について紹介する。
【0~1歳児】
まるで、「アンフォルメル」の「具体美術」の作品が並んでいるようだ。
こどもはまず点を打ち、次いで線を引き、線を集めたら面らしきものを描くようになる。動きのある線や点によって、躍動感のある大きな絵を描く。

こどもは、床に置いた画用紙からはみ出るように絵を描いている。
展示では、はみ出た部分はマットで隠れている。実際に描かれた様子の写真を絵の下に掲示している。
以下同様。
【2歳児】
幕末から明治にかけての手本の絵を忠実に模写する「臨画」の指導方法から、大正からは、こどもの創造性を重視した図画教育を提唱する「自由画」が展開され始めた。
真ん中に作者が入り込んだように、大きな円の塊を描き、そこから線が外に向かってのび出す。「友だち関係などから大きな二つの塊をシンボリックに抽象的に描いた絵」もある。


ところで、0歳から2歳児向けの鑑賞ワークショップや画材を使ったワークショップが美術館レベルでもう何年も前から行われている。関東地方では、定期、不定期を含めて、国立西洋美術館の「ゆったりBABY DAY」、平塚市美術館の「赤ちゃんアート」、町田市立国際版画美術館の「こどものための鑑賞会」、いわさきちひろ美術館の「あかちゃんのための鑑賞会」などが挙げられる。
【3歳児】
「身体機能の発達と遊びの深まりから、描かれる絵に厚みがでてくる。その厚みを持つ面は立ち上がるような力強さを感じる。
物事への認識が形をイメージさせることからくる。この年齢はものの区別認識や感情の表出・表現から混色も多く出てくる」。
【4歳児】
遊びの拡がりや深まりから、色をしっかり選択して多種多様な表現が見られるようになる。認識したことや、自己と他者、内と外の世界など自分がとらえたものごとを絵に表現する。楽しい不思議な絵を描く年齢。

【5歳から6歳児】
「思いのままに自然や自然素材と関わるこどもたちは、創造性を発揮して、造形活動(遊び)を展開する力をつけてくる。友だちと深く遊び込み、大きな造形作品を作りだしたこどもたちは、多様な絵を生み出す。新鮮で創造性にあふれ、迫力と躍動感が満ち、誠実で建設的な絵は、こどもたちの確かな育ちを語っている」。
会場の冒頭の展示は、こどもたちの絵を下記の四つの美術表現様式に分けて展示がされている。描いたこどもたち本人は、無論このような表現様式などあるとこどもたちは意識していないが、なるほどと感じて観ていた。
①思考型=写実主義
*地に足をつけた建設的なもの
②感情型=超現実主義
*夢と空想にあふれている
③感覚型=表現主義
*感情表現や色彩が豊か
④直感型=構成主義
*構築性があって構成的で知的
『芸術による教育』の著書を残した文芸や美術の評論家のイギリスのハーバート・リード(1893-1968)は、こどもの多様な絵を、写実主義、超現実主義、表現主義、構成主義の四つに分け、こどもたちには多様な個性があることを明らかにするためにこの分類を行っている。
主催者の子ども美術文化研究会は、こどもたちの絵を理解し、肯定的に受けとめていくために、こどもの絵の分類を試みたと述べている。
これらの絵を描いたこどもたちが、将来もこの画風を引き継いでいくかどうかは無論定かではないが、こどもの成長過程における表現として心を惹くものがある。
①「思考型=写実主義」に分類した絵
②感情型=超現実主義
③感覚型=表現主義
④直感型=構成主義
以上
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