《骸骨の聖母 Santa Muerte》 メキシコ「死者の日」を前にして
キリスト教の行事であるハローウィンが、ここ数年日本各地で盛大に行われている。日本人は、年間を通して、仏教徒、神道の信者、キリスト教信者と、信徒の姿を変えまくっている。
今年、映画「リメンバーミー(原題はCoco)」が日本で公開されたが、その観客動員数の累計は210万を超えていると言われている。天然色(表現が古い)に満ちた「死者の国」に迷い込んだミュージシャンを夢見る少年ミゲルが、「死者の国」のガイコツたちとの冒険を描いたファンタジー映画だ。この映画は、メキシコの伝統行事「死者の日」を基にしている。
今頃のメキシコは、11月の1日と2日の「死者の日」に向けて盛り上がっている。この最も土着的なお祭りを日本で流行らしたほうが、ハローウィンよりもよいのではないのか常々思っている。むろん、この「死者の日」も、現代にいたっては、お菓子メーカーや仮装業者にとっても商機であること確かなのだが。「死者の日」は、日本のお盆に近い。故人(先祖)を敬い、祭壇にお供え物をし、故人(先祖)のお迎えすることは同じである。メキシコ各地によって趣向の違う祝い方があるので、楽しみ方はいろいろです。
下記の動画は、日本語で簡単に「死者の日」を紹介しています。
ところで、「死者の日」の流れと異なる民間信仰がメキシコにはある。それは「骸骨の聖母サンタ・ムエルテ(Santa Muerte)」である。骸骨の姿の聖母を信仰するメキシコ人は、2012年現在で300万人を超えているという。「死が日常生活の中に当たり前のように存在している」といわれるメキシコには、骸骨のイコンが豊富だ。
「骸骨の聖母」を信仰し、その癒しや救いを求める人々の精神生活と、多様な図像表現を紹介する書籍がある。ラテンアメリカ美術研究者の加藤薫(1949-2014)が著した「骸骨の聖母 サンタ・ムエルテ 現代メキシコのスピリチュアル・アート」(新評論、2012年)は、「骸骨の聖母サンタ・ムエルテ」のルーツとその現在がわかる。多彩でキュッチュな骸骨イコンとはどのようなものかも。
この本を基にした展覧会を2012年に企画開催しました。詳細は下記リンクから。
加藤薫写真展「骸骨の聖母 サンタ・ムエルテ」
2012年9月25日(火)-10月5日(金)
http://galerialibro-art.cocolog-nifty.com/blog/2012/09/kaoru-kato-sant.html
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