100人で語る美術館の未来
福原義春編著
A5判/並製/236頁
初版年月日:2011/02/19
ISBN: 978-4-7664-1801-9
慶應義塾大学出版会
定価:2,625円 (本体:2,500円)
日本博物館協会は、東北関東大震災による岩手県、宮城県、福島県、茨城県における美術館、博物館の被害状況(3月29日現在)を発表している。このレポートによると、建物の倒壊や、展示品の損傷は免れているようだが、事業の延期、中止が伝えられ、当分の間は休館(いずれも3月29日時点で)の模様だ。
阪神淡路大震災の後、海外の美術館やコレクターは、日本への作品貸し出しに難色を示したり、もしくは当分見合わせる記事が、当時の新聞に掲載された。今回の影響はすぐに表れた。横浜美術館の「プーシキン美術館展」は、プーシキン美術館とロシア連邦文化省から、現時点では作品貸し出しはできないという判断が伝えられ、見合わせとなった。
東京国立博物館の「写楽展」は、5月1日からの開催に延期したが、海外からの出展作品が予定通り全てそろって開催できる確証はないという。海外から貸し出しを受けて開催する展覧会は、軒並みに中止になっている。われわれは、これに対してはなすすべもなく、受け身の状態である。
アートや美術館が今、大震災の被災地に救いの手を差し伸べるには無力だ。アートで、満腹にはならないし、家が建つ訳でもない。
本書は、昨年2月に開催した21世紀ミュージアム・サミットでの講演やディスカッションを通じて、美術館は「相互のコミュニケーションを媒介する場」であり、絵は「生へのポジティブなエネルギー」であることを浮かびあがらせている。今すぐでもないにしても、アートの力を見直される日がくることを願いたい。
***
100人で語る美術館の未来
目次
はじめに(福原義春)
第一部 作品と人をつなぐ回路の設計に向けて
Ⅰ 基調講演 「あさって」の美術館(鷲田清一)
絵を見るとはどういうことか?(佐伯胖)
Ⅱ 事例報告 イザベラ・スチュアート・ガードナー美術館(M.バーチュネル)
神奈川県立近代美術館(稲庭彩和子)
ルーヴル美術館(F.ルサール)
Ⅲ パネル・ディスカッション
(佐伯胖、高階秀爾、建畠晢、蓑豊、山梨俊夫、一條彰子、稲庭彩和子、M.バーチュネル、F.ルサール)
何のために絵を見るのか
美術館の未来
コメント(蓑豊)
ワールド・カフェ
第二部 あさっての美術館に寄せて
Ⅰ 座談会 社会の中の美術館(高階秀爾、稲庭彩和子、一條彰子、山梨俊夫)
Ⅱ インタビュー(氏川こずえ、草薙奈津子、栗原祐司、鴻池朋子、佐々木秀彦、並木美砂子、美山良夫、保坂健二朗)
おわりに(建畠晢)
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