バハ・カルフォルニアの洞窟絵
吉田喜重は、著書『メヒコ 歓ばしき隠喩』(岩波書店)で、「バハ・カルフォルニア半島の洞窟絵」について綴っている。
吉田喜重は、洞窟絵の撮影に行くメキシコ人チームに便乗して、向かおうとするが、現地の渓谷の増水によって行く手を阻まれていた。結局は、行けずじまいだったのだが、国立博物館で洞窟絵の写真を見せてもらう。
吉田は、「その写真は、映画のモンタージュではなく、より正確に言えば二重露出の手法を連想させる」と、写真に撮られた洞窟絵の最初の印象を語っている。
(中略)
「角を突き立てて走る野生の大鹿の群れ、それ二重露出されたように古代人と思われるフォルムが単純な抽象図形として、これも群れをなして描かれている」。
多重露出させたようなフォルムの〈ずれ〉は、吉田喜重に現代絵画と通底しあうものを感じさせ、マルセル・デュシャンの『階段を降りる裸体』(No.1, No.2)のような作品を思い起こさせていると続く。
16junio2023
*洞窟絵はMuseo Nacional de Antropologíaから引用。
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