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2018年10月26日 (金)

阿部展也 -あくなき越境者 NOBUYA ABE 1913-1971 Insatiable Quest beyond Borders

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 独学で画家を学んだ阿部展也(新潟県生まれ1913-1971)は、1937年に出版された、瀧口修造との共作詩画集『妖精の距離』によって注目を集めました。

 今展では、阿部展也の初期から晩年にいたるまでの主要作品に加えて、雑誌や写真、下絵などの資料や、交流のあった国内外の美術家の作品を含む約230点が紹介されています。

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画:阿部芳文(展也)/詩:瀧口修造 詩画集『妖精の距離』12点組(一部)
1937年

 戦前に実験的な写真を発表し、阿部展也は前衛写真の運動にも重要な足跡を残しています。

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大辻清司とのコラボレーション:下落合のアトリエでの撮影
左:《オブジェ、阿部展也のアトリエにて》 1950年
右:《オブジェ、阿部展也のアトリエにて》 1950年

 戦中は、陸軍の報道部写真班に所属し、出征先のフィリッピンで雑誌の表紙や挿画、写真を手掛けました。

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フィリッピンのローマ・カトリック信者の宣撫を目的に発行された雑誌『みちしるべ』の表紙原画 1943年 混合技法 紙

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《雑誌『みちしるべ』》 1942-43年(1-5号を合本)


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フィリッピン時代の写真帖

 戦後は具象的なモチーフを離れて、アンフォルメルから幾何学的抽象へと作風が目まぐるしく変わってゆくことになります。1948年から50年代末頃までは、人間像の変容を描いた作品の制作を行っています。

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奥:《作品》 1949年 油彩 カンバス
左:植物/生物エスキース

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左:《生誕》 1949年 油彩 カンバス
右:《飢え》 1949年 油彩 カンバス

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左から、《花子》 《太郎》 《蛸猿》 いずれも1949年作で油彩、カンバス

 1953年に日本美術家連盟の代表としてインドに7か月間滞在し、人々の暮らしや歴史的な建造物をとらえた写真は、「記録」としての要素が強く、前衛写真とは異なる方向性をみせています。

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岩波写真文庫284 インドの一断面 1958年発行

 1957年から欧州や米国での発表や取材の活動が活発となり、自在に地域と時代を越境し始めます。そのなかで、作品は変化し続けます。1959年以降、作品画面から具象的モチーフは姿を消し、「材質自体が語りかける」絵具、エンコースティックによる抽象絵画に移行してゆきます。これは蜜蠟と油絵具等を調合し、バーナーや金属コテで加熱しながら画面に定着させる技法です。

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旧ユーゴスラヴィアのスケッチ

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左:《Flowing Stone》 1960年 エンコースティック、板
右:《CONVERSATION OF JAPAN》 1960年 エンコースティック、板

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左から:《R-1-ROMA》 1968年、《R-29》 1970年、《R-32-ROMA》 1970年、《R-7-ROMA》 1970年

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《作品》 1966年 樹脂

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右は、1974年に神奈川県立近代美術館で開催された「阿部展也回顧展」のポスター

 阿部展也は、創作活動のみならず、展覧会プロデュースまでも手掛けています。1965年5月に、BSN新潟美術館(新潟市中央区)で開催された「現代イタリア美術展」では、当時のイタリア美術の最新傾向を紹介する20作家(ルーチョ・フォンタナ、エンリコ・カステルラーニなど)38点が、阿部のコーディネートによって紹介されました。阿部とイタリアの前衛美術家たちとの交流が窺い知ることができます。

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「現代イタリア美術展」(BSN新潟美術館、1965年)の出品作の一部を展示しています。

 晩年の9年間は、ローマで単身で過ごし、同地で58年の短い生涯を閉じました。

阿部展也 -あくなき越境者
NOBUYA ABE 1913-1971 Insatiable Quest beyond Borders

埼玉県立近代美術館
(さいたま市浦和区常盤9-30-1 電話048-824-0111)
開催中 11月4日 (日)まで
休館日 月曜日
開館時間 10:00-17:30 (入場は17:00まで)
観覧料 一般1000円 大高生800円など
主催 埼玉県立近代美術館、読売新聞社、美術館連絡協議会

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