« 須見祥子/津上みゆき/椿会2016 初心 | トップページ | 卯野和宏 洋画展 »

2016年5月26日 (木)

マヌエル・アルバレス・ブラボ写真展-メキシコ、静かなる光と詩 Manuel Álvarez Bravo Photographs-Mexico, Light and Time in Silence

Photo
《舞踊家たちの娘》 1933 年
The daughter of the dancers, 1933
マヌエル・アバレスブラボーカイヴ蔵
©Colette Urbajtel/Archivo Manue Álvarez Bravo, S.C.

 ラテンアメリカの写真家たちの作品を紹介する展示が最近続いている。ペルーのマルティン・チャンビ(1891-1973)、メキシコのグラシエラ・イトゥルビデ(1942-)、異色であるが、140年前にグアテマラで写真家になった屋須弘平(1846-1917)たちがそうである。そして、7月2日からは、20世紀写真史に大きな足跡を残したメキシコの巨匠、マヌエル・アルバレス・ブラボ(1902-2002)の国内最大規模の回顧展が、世田谷美術館(東京・砧公園)で開催される。

 1910年に勃発したメキシコ革命は、それまでのエレガントな服装で決まりきったポーズ写真や単調な風景写真ばかりであったメキシコを、革命の歴史的証言を伝える報道写真の場と変えた。革命後の1920年代に入ると、文化再生が進められ、壁画運動という絵画の世界ばかりでなく、写真の世界も活気づいた。そうしたなかティナ・モドッティやエドワード・スタイケン、ポール・ストランド、アンリ・カルチエ・ブレッソンといった写真家たちがメキシコに続々と入ってきたことで、メキシコはピクトリアリズムから脱却し、カメラで像を結ぶ方法を模索し始める。マヌエル・アルバレス・ブラボは、写真を通じて極めて繊細な言語を投影して、1920年代末に頭角を現した。最晩年の1990年代末に至るまで、一貫した独自の静けさと詩情をたたえた写真を撮り続けた。

 本展は、本展は作家遺族が運営するアーカイヴより全面的な協力を得て、192点のモノクロプリントと多数の資料を、全4部・9章構成で年代順に展覧する。

マヌエル・アルバレス・ブラボ写真展
―メキシコ、静かなる光と時
Manuel Álvarez Bravo Photographs

Mexico, Light and Time in Silence

会期 2016年7月2日(土)-8月28日(日)

会場 世田谷美術館 1階展示室
    東京都世田谷区砧公園1-2
    電話03-3415-6011(代表)
    美術館サイトhttp://www.setagayaartmuseum.or.jp/

開館時間 10:00-18:00(入場は17:30まで)
休館日 毎週月曜日 
      ※ただし7月18日(月・祝)は開館、翌7月19日(火)は休館。

観覧料 一般1000円、65歳以上800円
      大高生800円、中小生500円 
      ※障害者の方は500円。ただし小・中・高・大学生の障害者は無料、
        介助者(当該障害者1名につき1名)は無料。
      ※団体料金(20名以上)あり。
      ※ほかにも割引制度あり、詳細は美術館まで。

主催 世田谷美術館(公益財団法人せたがや文化財団)、読売新聞社、美術館連絡協議会
後援 世田谷区、世田谷区教育委員会、在日メキシコ合衆国大使館
特別協力 マヌエル・アルバレス・ブラボ・アーカイヴ
企画協力 クレヴィス
助成 公益信託タカシマヤ文化基金
協賛 ライオン、大日本印刷、損保ジャパン日本興亜、日本テレビ放送網、キヤノンマーケティングジャパン

 

【第1部】 革命後のメキシコ――1920-30年代
第1章 モダニズムへ
アルバレス・ブラボが頭角を現したのは、革命の動乱を経たメキシコが新たな社会建設に向かう1920年代。身近な対象のフォルムを強調し、堂々たる記念碑のように撮るモダニズムの写真表現を試みを行った。初期の作品を紹介する。
S_2
《紙の波》 1926-27年
Paper waves, 1926-27
マヌエル・アバレスブラボーカイヴ蔵
©Colette Urbajtel/Archivo Manue Álvarez Bravo, S.C.

第2章 ざわめく街の一隅で
1930年代、アルバレス・ブラボはモダン都市に変貌しようとするメキシコシティをよく歩き、観察した。パリを撮ったウジェーヌ・アジェの作品にも感銘を受けながら、若き写真家は街の一隅でふと出合った光景を写し取る。温かみと同時に、少々の不穏さも同居する作品を紹介する。
B_3

《身をかがめた男たち》 1934年
The crouched ones, 1934

マヌエル・アバレスブラボーカイヴ蔵
©Colette Urbajtel/Archivo Manue Álvarez Bravo, S.C.

【第2部】 写真家の眼――1930-40年代
第1章 見えるもの/見えないもの
アルバレス・ブラボは、撮影者には見えない世界を人々が見つめている、と感じさせる作品や、鑑賞者の想像力に働きかける題名をつけた作品をしばしば発表している。見えるものと見えないもの、視覚と想像力の関係を問う、詩的な作品を紹介する。
C
《夢想》 1931年
Daydreaming, 1931

マヌエル・アバレスブラボーカイヴ蔵
©Colette Urbajtel/Archivo Manue Álvarez Bravo, S.C.

第2章 生と死のあいだ
メキシコでは、生と死は対立するものではなく、円環をなしているという考え方がある。アルバレス・ブラボもこうした死生観がにじみ出るような作品を残している。ひっそりとした佇まいのなかに、深い思索へと誘うような作品を紹介する。
D_2
《死者の日》 1932-33年
Day of all the Dead, 1932-33

マヌエル・アバレスブラボーカイヴ蔵
©Colette Urbajtel/Archivo Manue Álvarez Bravo, S.C.

第3章 時代の肖像
1930-40年代のメキシコは、ファシズム体制を逃れた亡命芸術家や知識人を数多く受け入れ、当時最も国際的な文化交流の場となった。ディエゴ・リベラ、フリーダ・カーロ、アンドレ・ブルトンやレフ・トロツキーなど、アルバレス・ブラボが撮った著名人の肖像写真を紹介する。また、アンリ・カルティエ=ブレッソンら他のアーティストからの書簡(複製)や、アルバレス・ブラボの作品が掲載された雑誌等の資料もあわせて展示し、時代の空気を伝える。
E
《フリーダ・カーロ》 1937年頃
Frida Kahlo, c.1937

マヌエル・アバレスブラボーカイヴ蔵
©Colette Urbajtel/Archivo Manue Álvarez Bravo, S.C.

【第3部】 原野へ/路上へ――1940-60年代
第1章 原野の歴史
1940年代のアルバレス・ブラボは、生活のために映画産業に入ってスチル写真を撮る一方、国内の遺跡や先住民集落の調査に同行し、記録写真の撮影もしている。尊厳に満ちた先住民系の人々の姿や、力強くも繊細な美しさを見せるメキシコの原野を撮った作品を紹介する。また、トゥルムやボナンパクなど、著名な遺跡の調査の記録写真自体も、スライドショーで公開する。
F_2
《トゥルムのマヤ人の少年》 1943年
Mayan boy from Tulum, 1943
マヌエル・アバレスブラボーカイヴ蔵
©Colette Urbajtel/Archivo Manuel Álvarez Bravo, S.C.

第2章 路上の小さなドラマ
若い頃から街を撮影していたアルバレス・ブラボだが、この時期には、路上を行き交う人々の様子を軽妙なユーモアとともに撮るようになる。映画のワンシーンのようにも見える、新しい展開の作品を紹介する。
Photo
《世間は何と狭いことか》 1942年
How small the world is, 1942

マヌエル・アバレスブラボーカイヴ蔵
©Colette Urbajtel/Archivo Manuel Álvarez Bravo, S.C.

【第4部】 静かなる光と時――1970-90年代
第1章 あまねく降る光
国際的な評価が高まるなか、アルバレス・ブラボは1970年代以降も新作の撮影を続ける。さまざまな質の光と、その移ろいがもたらす魅力的なかたちに眼をこらし、また荒々しくも豊かな自然や女性の身体に、循環のなかで持続する生命の力を見出す。いっそう精緻になり、時に神話的世界につながる作品を紹介する。
H
《リュウゼツランの上の窓》 1974-76年
Window on the agaves, 1974

マヌエル・アバレスブラボーカイヴ蔵
©Colette Urbajtel/Archivo Manuel Álvarez Bravo, S.C.

第2章 写真家の庭
メキシコシティ南部の静かな地区に佇むアルバレス・ブラボの自宅には、風通しの良い庭があった。晩年は、そこが作家にとっての小宇宙となる。ごく小さな空間に干される日々の洗濯物、壁やガラスの窓と戯れる木々の影など、この上ない喜びをもって初々しく撮られた最晩年の作品を紹介する。
I
シリーズ〈内なる庭〉より 1995-97年
from the series "Inner garden", 1995-97

マヌエル・アバレスブラボーカイヴ蔵
©Colette Urbajtel/Archivo Manuel Álvarez Bravo, S.C.

関連企画として下記のイベントが用意されている。

◆トーク
「アルバレス・ブラボと20世紀メキシコ写真の歩み」
日時 2016年7月3日(日)13:00-15:00(開場12:30)
講師 ロサ・カサノバ(メキシコ国立人類学歴史学研究所研究員)
    アウレリア・アルバレス・ウルバフテル(マヌエル・アルバレス・ブラボ・アーカイヴ・ディレクター)
    聞き手:塚田美紀(世田谷美術館/本展担当学芸員)
    ※逐次通訳、手話通訳付
会場 世田谷美術館講堂
定員 先着140名 
    ※当日12:00よりエントランス・ホールで整理券配布
参加費 無料 

◆文学イベント
「メキシコの詩と短編小説をよむ」
日時 2016年7月9日(土)14:00-15:30(開場13:30)
講師 野谷文昭(名古屋外国語大学教授)
会場 世田谷美術館講堂
定員 先着140名 
    ※当日13:00よりエントランス・ホールで整理券配布
参加費 無料

◆ミニレクチャー
「30分でよくわかる!アルバレス・ブラボ写真展のポイント」
日時 2016年7月31日(日)・8月20日(土)
    各日とも15:30-16:00(開場15:15)
講師 塚田美紀(世田谷美術館/本展担当学芸員)
会場 世田谷美術館講堂
定員 当日先着140名
参加費 無料

各イベントの詳細およびほかの関連企画については美術館のホームページを参照。

|

« 須見祥子/津上みゆき/椿会2016 初心 | トップページ | 卯野和宏 洋画展 »

展覧会/Exhibition」カテゴリの記事