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2011年7月 3日 (日)

NHK日曜美術館 記憶に辿りつく絵画 ~亡き人を描く画家~

ボリビアで起きた交通事故で喪った娘の肖像画の依頼が、娘の父親から画家の諏訪敦にあった。NHKの日曜美術館(7月3日再放送)が、亡くなった女性の肖像画が完成するまでを追う。

諏訪が描き始めたのは、女性が腕時計を外そうとしている場面である。それは、時を刻む現実の世界から黄泉の世界への向かうことを暗示している。しかし、交通事故が起きたボリビアの政府から、いまだ事故の詳細が知らされていない父親にとっては、娘が現生に居なくなってしまった気持ちには振り切れいない。この父親の思いを綴ったメールのやりとりが、諏訪との間で何度なく行われる。

諏訪は、交通事故などの不慮の事故で家族を失った遺族の心のケアを行うNPO法人を訪ね、喪った者たちには、家族にも見せなかった表情があると聞かされる。

諏訪は早速一度描いた作品を塗りつぶし始め、両親に見せなかった表情の娘を描き始める。最初は腕から腕時計を外しかけた手の仕草を描いたが、それを手に単に持っている場面に変えた。

完成した作品を持ち、諏訪は娘の両親の家を訪ねる。両親は完成した絵を見ると、架空の娘がこの現実の世界に戻ってきたと喜び、感涙した。

諏訪は、決して肖像作家が描く単なる肖像画を描いてはいない。描かれた人物とそれを見るわれわれとが共有できる時間を描いたと私は思う。

Suwa_atushi

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